2009-11-05 00:00 | カテゴリ:外道無量院(インカレ)
全日本インカレを総括する。

レース結果は、既報の通り、「早稲田、初の総合連覇&スナイプ級優勝」、と「福岡経済、470級2連覇」で幕を閉じた。470級5本、スナイプ級3本、と実施方式と同様、変則的な大会となった。

総合の順位は、「早慶関関」。

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私学のヨット部員減少が危機的に叫ばれる中、この上位4校の部員数はすべて選手だけで30人以上だ。しかも、レースに出ているレギュラーメンバーに、「大学からヨットを始めた」、という一般受験組部員を含む。一方では、それぞれに高校以前から経験があり、所謂、「セレク」で入学しながら、レース出場の機会が無かった「控え」に甘んじる選手も存在しているのも事実。この事実を知らない方々には意外に思えるだろうが、「セレク組」で固めるかつての強豪校が、優勝争いはおろか、入賞すら逸してしまうところも出てきている現象とつながるのではないだろうか?

総合2連覇(スナイプ級初優勝含む)を果した早稲田を分析する。

鈴木恵詞主将(スナイプ・3番艇加藤スキッパーのクルー)は、早大学院(高校)入学後、潰れかかった「部員1名」のヨット部に入部、ヨットを始めた。同期の470エースクルー・作本大朗も同様である。今大会では、ともにルーキー・スキッパーが舵を握る「両クラスの3番艇」の「クルー」として出場、その重責を立派に果たした。目立ちはしないが、この2名が今回の総合優勝への一番の貢献者だろう。今から遡る事3年前、小松一憲(現・アビームコンサルティング)コーチが、「早稲田ヨット部史上最強」と称したチームでも、スナイプ級の第1レースで、梅野艇が後続の自チーム2艇をDNFにおとしめるダントツのトップフィニッシュをしてしまったり、470級では、ルーキーだった新郷艇が福岡経済にプロテストで殺されたりして、前々年3位、前年2位と近づきつつあったかに思えた「総合優勝」からは却って遠ざかってしまった。その当時、控え部員はロクに得点計算も出来ず、海上にいる選手は、何処に勝っているのか負けているのか、トップとの差は何点あるのかもはっきりと分らず戦っていた。セーリング以前に「インカレの戦い方」という面において、優勝を争うような他チームに大きく遅れをとっていたのである。その後、その弱点に気付いた西宮大会の神谷主将、今年、牛窓大会の鈴木主将は、「戦力」の面では年々弱体化する中、「インカレで勝てるチーム」として、部全体をきっちりとまとめあげてきた。今では、海上の選手のみならず、自チームのホームページ掲示板にも得点経過の速報が、「日本一早く載る」、と評判である。レースの出場選手のみならず、「控え」やバックアップに徹する部員一人ひとりが自分に与えられたアサイメント(役割)を着実にこなし、「総合力」として日本一のヨット部に仕上がったのだろう。「総合2連覇」はその証となった。

一方、大学ヨット部へ一番の選手供給源となってる九州水域においてさえ、今年を最後に博多女子や五輪選手を輩出した東海二のヨット部が消滅するなど、高校ヨット部が先細りの現状、セレク組だけに頼っていては大学のヨット部は成り立たない、という無言のメッセージを残してくれた早稲田の総合優勝と、「早慶関関」という総合のベスト4ではなかったか?また、総合ベスト3の「早慶関」と470級優勝の福岡経済は、冒頭で取り上げた早稲田・鈴木、作本に代表される、付属高上がりの「自前で育てた選手」がチームの中心となって活躍している。慶應の470級エーススキッパー・河合龍太郎、関西学院のエース市野艇のクルー・西尾将志、福岡経済のエーススキッパー・飯束潮吹はいずれも付属高校時代からの中心選手である。

次に、「早慶関関」の明暗を分けたポイントを指摘する。

関東インカレの翌週に開催された10月17、18日の早慶戦。今年は双方の部員が一緒に聞くことになった「講演」に意味があった。詳細については省くが、現役早稲田ヨット部員も、こと、「ヨット」に関しては慶應に対してあまりリスペクトが感じられないが、「早稲田と慶應」という「私学の名門」として、お互いに譲れない面があるとともに、一学生として、深層での「相互リスペクト」がある。一方、「関関」に関しては、関西での名門同士でありながら、ヨットに関しても学生、OB同士としても変な意地を張り合うだけで、この「相互リスペクト」が感じなれない。結果、「早慶」は、余分な神経を使わずに戦え合えたのに比べ、「関関」は、必要以上の神経を使いすぎたのではないか?

最後に具体的に今大会の「勝負の分れ目」について言及する。

ズバリ、勝負を分けたのは、初日に起きたスナイプ級の第2レース、慶應義塾・中村艇(主将)から関西学院・笠井艇に出されたプロテスト。全シリーズを通して出された抗議書が6件と少ない(インカレとしては)中、優勝絡みとしては唯一成立したこの関西学院・笠井艇のDSQが最後の最後までチーム全体に重くのしかかった。

審問前まで、470級1位、スナイプ級2位で、総合1位と、狙い通りのスタートを切ったと思われた関西学院だったが、この審問の結果、得点面(+58)だけでなく、後のレースにまで心理的に大きく影響を及ぼした。

同じスナイプ級のレースで、後に関西学院は早稲田などに度々プロテストされる度に720度を3回転。また、17点リードの首位で迎えた470級の最終レースでは、小栗、松下の2艇がスタート時に福岡経済の3艇に狙われて、それぞれ720度回転を強いられて致命的な出遅れ。他でもレポートされているように、変則的なコンディションとなったこの最終レースでの追い上げは物理的に無理で、470級のクラス優勝まで手放すハメに陥った。関西学院の「後の5回転」につき、それぞれ「最初のDSQ」を食らっていなければ、審問に持ち込んでも成立は難しいようなケースも大半とも思われるが、「また、審問で殺される」、という恐怖心が選手に重くのしかかり、回らなくても良いケースで回ったのは想像に難くない。結果、470級5レース、スナイプ級3レースと、成立数の少なさも手伝って、スナイプ級の初日の大量リードで俄然有利になった早稲田が心理的にも余裕を持ち、スナイプ級と総合で楽々と逃げ切り。一方、470級の最終レースでは、関西学院・エース市野艇には敵わない、とみて2、3番艇を3艇で潰しにいった作戦がまんまと嵌った福岡経済に軍配があがった。

以上が、鉄火場に命を張って生き残ってきた、「勝負の専門家」にだけ分る「別れ目」である。


より踏み込んだ「総括・特別版」は、昨年同様に希望者のみに私信として送る。

希望者は、 QZT00265@nifty.ne.jp まで。

11月8日24時(日本時間)を以って、締め切りとさせて頂きます。

配信は11月9日一杯には責任も持って行う予定。


合掌

外道無量院


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